2015.3.24 紙パルプ倶楽部の会合で
《「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」再生日本製紙石巻工場》(早川書房)の著者佐々淳子さんの講演を拝聴した。書籍は、池上彰氏がテレビ「日本の底力」で紹介し、劇化もされて話題となったノンフィクション本。
「紙がどうやって造られるのか?」「どこで造られているのか?」今まで全く知らなかった、という話から講演が始まった。著作、出版に関わってきた者として恥ずかしい限りだし、関連する殆どの連中がそんな状況だ。空気や水と同水準では無いが、トイレットペーパーが不足しスーパーに行列が並んだとゆうような危機に直面する時だけ「紙」の重要性が認識されているような気がする。紙が消えたら世の中は回らないことを実感しながらルポを続けさせて頂いた。今回震災で壊滅した日本製紙石巻工場をルポし書籍にまとめることが出来たのは、工場復興に尽力され活躍された方々の苦悩、復興への意欲、喜び、悲しみ、卓越した指導者のリーダーシップなどなど幅広く直接触れ得たお蔭だ。そして書籍が出版されるまでにどれだけの方々が携わり「つながり」を形成しているかを再認識、確認した。電子書籍が増加しているが、紙媒体の書籍、雑誌は今後も重要な位置を占めながら共生していく。今後も物書きの一人として紙文化に貢献していきたい。
ところで書籍文中2か所(81頁8~10行①、128頁10~11行②)に、小生が勤務していた会社「
日本フイルコン㈱」が生産している製品(
抄紙要具ワイヤー)が出てくる。その部分を引用させて頂くと。
①まずパルプは水で薄められて、
目の細かい網状のワイヤーの上にジェットノズルで吹き付けられる。するとメシュ部分から水分だけが落ちて、薄いシートができあがる(ワイヤーパート)
②パルプが
メッシュのワイヤーの上に勢いよく吹き付けられ、シ-ト状になって流れていく。シートから白濁した水がしたたり落ちた。
この
ワイヤーが無ければ紙の製造は不可能である。ワイヤーは、正に紙製造に欠かせない要(かなめ)の産業用資材である。日本フイルコンは、「ワイヤーパート」を担う縁の下の力として創業以来100年、ワイヤーを国内外の紙製造企業に供給し続けている。今後も「紙つなげ!」の精神で紙文化に貢献していきたいものだ。《東京証券市場第一部上場》
「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」は、第10回開高健ノンフィクション賞を授与された素晴らしい書籍だ。近々英訳されて世界に向けて出版されるそうだ。国際的にも話題になることだろう。筆者・佐々涼子さんの今後のご活躍を期待して止まない。