切手に見る紙のお話(43)「紙の歳時記 夏【2-1】傘」

「紙の歳時記 夏【2-1】傘」
2016年の今年3月11日80歳の誕生日を迎えた。略語が縦書きの八十に見えることから、80才を迎えた年を「傘寿」として祝う風習がある。傘と紙の関係は深いので考察する。
b0089323_9231841.jpgb0089323_9242236.jpg 「傘」は、使う目的によって雨傘、日傘と区別したり、日本の伝統的な工法と材質で作られたものを和傘、西洋の伝統的な工法と材質で作られたものを洋傘と区別されたりする。洋傘をこうもり傘と称することもある。
日本には欽明天皇の時代552年に、百済聖王(聖明王)の使者から伝えられ、傘は貴人にさしかける絹張りの大型のものであった。手に持つ傘は文禄時代1954年堺商人がルソンより伝えたといわれている。一般に普及するのは江戸時代になってから。当初は主に日射を避ける「日傘」として用いていたが、その後日本独自の構造的進化し、降水に対して使うことが多くなっていった。製作過程は徐々に分業化され、江戸時代には失業した武士が副職として傘を製作することもあった。17世紀のフランスでは、町中で2階から投げ捨てられる汚物(糞尿)を避けるために傘が必需品だった。
b0089323_925459.jpg 雨傘は軸と骨が金属製で、防水加工した布が張られている物が多いが、近年ビニール傘が大量生産されて気軽に使われている。日傘はその用途上、防水機能よりも紫外線の遮断(UVカット機能など)や装飾性が求められ、雨傘と比較してサイズが小さめである場合が多い。
 紙と傘の関係をみると、洋傘の傘布では防水加工した木綿、絹、ナイロン、ポリエステルなどを材料としているが、和傘では傘布として油紙や柿渋、亜麻仁油、桐油等を塗って防水加工した和紙を使っている。耐水性を持たすために丈夫な楮紙が用いられる。和傘に使用する和紙は虫食い、湿気による侵食、多雨時の防水性にも問題が生じる。b0089323_9262710.jpg
 雨傘の一種である「蛇の目傘」は、傘の中央部と縁に青い紙、その中間に白い紙を張って、開いた傘を上から見た際に同心円(蛇の目模様)となるようにしたもの。外側の輪を黒く塗ったり、渋を塗ったりするなどもある。
和傘は、現在では雨傘としての利用はほとんどないが、郷土の特産品として岐阜、高松、金沢、長野喬木村など伝統工芸品として生産されている。
 岐阜和傘(岐阜県郷土工芸品)の傘布には美濃和紙が使用されている。岐阜市加納地区が主な生産地で、傘を広げた干b0089323_153041.jpgし場の光景が岐阜和傘の町でみられる。
 高松和傘(香川県伝統的工芸品)は、骨に細長い和紙を張り継いで製作するが、高松和傘では安価で大量生産するため、「胴紙」(どうがみ)と呼ばれる円形の紙を骨に張る簡略化の工夫がなされている。金沢和傘(伝統工芸品)は、岐阜和傘技術を基本としている。阿島傘は、長野県下伊那郡喬木村の特産品の和傘。
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左1*1958. 4.20発行  切手趣味週間 鳥居清長「雨中湯帰り」
左2*1983. 1.24発行  近代美術シリーズ第15集 伊東深水「吹雪」
左3*1970. 7.10発行  古典民芸シリーズ第1集「歌舞伎 助六」
左4*1997. 9.12発行 国際文通週間 江戸名所雪月花「隅田川堤雪の眺望」 
右 *2000.10.20発行 ふるさと切手(愛知) 小野道風と「玉泉帖」
下 *1970.7.10 カバー「歌舞伎 助六」
参考資料
紙の博物館機関誌「百万塔」第146号「紙豆知識17」
Wikipedia 「傘」「岐阜和傘」「高松和傘」「金沢和傘」「阿島傘」、web 「京和傘千吉屋」
平凡社「大百科事典」
  
by god-door70 | 2016-04-18 15:54 | 切手に見る紙のお話(paper) | Comments(0)
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