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切手に見る紙のお話(56)「紙の歳時記 夏【3】うちわ」

「紙の歳時記 夏【3】うちわ」

切手に見る紙のお話(56)「紙の歳時記 夏【3】うちわ」_b0089323_113109.jpg「うちわ」は、細い竹を手に持つ部分だけ残して、細かく幾本かの骨に割り、これに紙や絹などを貼ったもので、夏に涼をとる具である。用途はさまざまで古くは儀式、縁起、祈願、軍配、行司、信仰、占いなどにつかわれた。高松塚古墳の壁画には大型うちわをかざした女性が描かれている。
切手に見る紙のお話(56)「紙の歳時記 夏【3】うちわ」_b0089323_11195570.jpg日本には中国から伝わったとされ、古来、うちわは鳥毛や獣毛、蒲葵(びろう)や芭蕉の葉にはじまり、もっと大型で、「あおぐ」ためより「はらう」「かざす」ためのものであり、形態や材質は時代によって変化してゆき、竹骨と紙を素材とする現在のかたちとなった。
柿渋を塗った渋うちわが、台所の火あおぎ用として重宝な台所用品のひとつであった時代を経て、扇風機やクーラー、ガスや電気のコンロの普及などの生活環境の著しい変化により実用面は縮小していく。現今は需要が減退しているが、夏場を中心に涼をとる道具、花火大会など日本の風情を楽しむおしゃれの小道具、キャンプ道具、広告の媒体として便利に利用されている。
切手に見る紙のお話(56)「紙の歳時記 夏【3】うちわ」_b0089323_18125688.jpg南方諸国ではヤシの葉、樹の皮、ビロウの葉などを利用したうちわが使用されている。
切手に見る紙のお話(56)「紙の歳時記 夏【3】うちわ」_b0089323_11235998.jpg平成9年5月、国の伝統的工芸品に指定され丸亀うちわは、全国シェアの90%(生産量は年間約8,300万本)を誇る地場産業として伝統を維持している。江戸初期に金比羅参詣の土産物として、朱赤に丸金印の渋うちわが作られたのが始まりといわれている。天明年間(1781~1789年)京極丸亀藩の下級武士の内職として奨励したこともある。丸亀地方では「伊予竹に土佐紙貼りてあわ(阿波)ぐれば讃岐うちわで至極(四国)涼しい」と歌い継がれています。竹は伊予(愛媛県)、紙は土佐(高知県)、ノリは阿波(徳島県)というように、材料が近県で揃うという強みが丸亀うちわを支えているのである。
うちわの町らしく、丸亀城の内堀のほとりに、この歌を刻んだ石碑があるという。

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常陸太田市の「雪村うちわ」の創始者は室町時代の水墨画家で禅僧、雪村でうちわは四角いかたち西ノ内和紙に絵付けをしたもので、水戸光圀も愛用したといわれている。「雪村うちわ」は、真竹で作った骨に西ノ内和紙(常盤大宮市)を貼り、馬や茄子、かかし、水戸八景など雪村ゆかりの山水花鳥の水墨画を描いた四角で丈夫はうちわである。骨になるのは秋にとった地元の真竹。西の内和紙は、楮皮の繊維だけで漉かれていて強靭で、虫もつかず、保存するのに適した紙で、昭和52年6に国の無形文化財に指定されている。

参考資料
web 「丸亀うちわ/丸亀市役所」、「うちわの港ミュージアム」、「雪村うちわ/茨城県」、「西の内和紙/茨城県」、「桝儀団扇店」
2012.8.24 日経新聞 「桝儀団扇店店主・杯 聡子《雪村うちわ 逆風なんの》」

*1967.4.20 切手趣味週間 「黒田清輝画《湖畔》」
*1973.3.26 高松塚古墳保存基金 「高壁女子群像」
*1988.4.19 切手趣味週間 「鳥居言人画《長襦袢/帯》」
       さくらめーる賞品小型シート
*1997.5.15 ふるさと切手「香川/丸亀城」
by god-door70 | 2016-06-09 18:15 | 切手に見る紙のお話(paper) | Comments(0)
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