切手に見る紙のお話(70)日本の名著【3】茶の本」

日本の名著【3】茶の本」
b0089323_11475676.gif「NHK100分de名著]の番組でとりあげられた《茶の本》を読み日本の名著の3冊目にすることにした。「紙の歳時記【6】茶」でお茶についてブログアップしているので一部重複する記述になっている。
「茶の本」の著者岡倉天心(1863ー1913)は、文人であり思想家。東京美術学校(現東京藝術大学)の設立に大きく貢献し、日本美術院を創設。近代日本における美術史学研究の開拓者である。
「茶の本」は、日本文化の啓蒙書として1906年ニューヨークで英語で出版され世界中で読み継がれている。近代欧米の物質主義的文化と対比して、東洋の伝統精神文化の奥義を解こうという壮大な構想をもとに書かれた文明論だある。欧米社会にいかにして日本文化の精神構造そしてその奥深さを茶道を通じて伝えようと試みた書である。
b0089323_18174047.jpg 山崎武也著「岡倉天心《茶の本》を読む」では、全7章を「➀お茶は人類共通=美しく生きる知恵」「②お茶の歴史=深く長いお茶の歴史」「③道教と禅=《無常》と《虚》の教え」「➃茶室=茶室をつらぬく不完全性」「⑤芸術の鑑賞=美と心通わせる方法」「⑥花=花がそこにある意味」「⑦茶人=お茶と共に生きる」と読み替えて解説してくれている。「茶の本」を読んでいくと、日本文化の隅々にいたるまで「茶の思想」の深い影響が及んでいることがわかる。最終章では、千利休が最後まで自分の主義主張を貫いて心の乱れがなく未知の世界への旅立ちが書かれている。「美しく死ぬためには人生の一瞬一瞬を美しく生きておかなければならない」ことを示唆している。
b0089323_944638.jpg「茶の本」を通して茶道の奥深さを痛感した。気に止まった点を数か所独断と偏見で列挙してみよう。「世の中、少しでも美しいものを見出し、それを大切にしていこうとするのが茶道の基本的姿勢です。」 「お茶の木がツバキ科に属していることからお茶を《ツバキの女王》と名付けるのも悪くない。」 「なんというおいしい飲み物でしょう。薄い小さな葉は、澄んだ空に浮かぶうろこ雲のように漂い、エメラルド色の流れに乗った睡蓮のように揺らいでいます。」 「原始時代の男が恋人に対して、はじめて花を贈ったとき普通の動物の域を脱して高等動物になったのです。」 「茶人によると真に芸術の鑑賞ができる人は、芸術を人生に生かすことができる人だけである。」などなど。
b0089323_20491531.jpg 「茶室」について、天心は茶室を人生という砂漠の中の「オアシス」に例えている。茶室は芸術鑑賞のための場所であり、すべての調和が保たれ、しかも簡潔で自然なリズムの支配するところであるとしている。
茶室の切手として「明々庵」がある。明々庵は茶人として知られる松江藩七代藩主松平不昧公の好みによって建てられ茶室。茅葺の厚い入母屋に不昧公筆の「明々庵」の額を掲げ、茶室の床の間は、五枚半の杉柾の小巾板をそぎ合わせた奥行きの浅い床で、また二畳台目の席は中柱もなく炉も向切りといった軽快なものとなっている。

参考資料
 山崎武也著「岡倉天心《茶の本》を読む」PHP文庫
 ソーントン不破直子著「岡倉天心《茶の本》」社会思想社
 web「NHK100分de名著《茶の本》」「名著を読む「岡倉天心《茶の本》を読む」

*1952.11.3 文化人切手「岡倉天心」
*2001.5.31 LESOTH 等伯画「千利休」
*1991.10.8 日本茶100年記念「茶の花と茶器」
*2001.3.21 ふるさと切手「島根・茶室明々庵」
by god-door70 | 2016-07-27 14:42 | 切手に見る紙のお話(paper) | Comments(0)
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