(続)2006.10.14 皇居見学を終わって東京駅に向かって歩き交差点和田倉門に立つと左手にレンガ造りの建物が目に入っきたので立ち寄った。渋沢栄一(1840-1931)によって創設された東京銀行協会のための集会施設「旧東京銀行集会所」があったところである。1993年(平成5年)に外壁2面のみを残し、高層ビルに改築されてしまっている。改築前の建物は、松井貴太郎による設計で、 1916年(大正5年)に竣工した煉瓦造2階建てであった。
昭和年代末に、時折この建物で開かれた会合に出向いたことがあるが、内部は天井が高い、重厚な趣のある建物であったことが想い出される。建物外壁だけ残されているのがせめてもだが、保存したい近代建物がどんどん消えてゆくのは残念だ。
東京駅北口近くにある日本工業倶楽部会館建物も2003年に高層ビルとの一体化で建て替えられたが、保存・再生され国の登録有形文化財として登録されている。1920年に竣工した日本工業倶楽部会館は、「旧東京銀行集会所」と同じ松井貴太郎の設計による建物。保存が難しい状態だったため、西側3分の1のみが保存され、残りの3分の2は、元の設計デザインを再現して建替えられているとのこと。現在の姿はあまりにもきれいすぎる印象をもつ建物となっている。建替え前の会館もしばしば入館したが黒光りした柱、階段などが印象に残っている。
「旧東京銀行集会所」のように近代建築の外壁だけを保存する方法と再現方式のどちらが良いのか正直分からない。赤レンガ造りの東京駅舎、東京中央郵便局の再開発計画があると聞く。いたるところで貴重な近代建築は風前の灯か。