新宮さま「命名の儀」と「大高檀紙」(2) 檀紙は、和紙の一種で、最も長い歴史をもつ紙の名称である。奈良・東大寺大仏殿(図4)の裏手にある正倉院が所蔵する奈良時代の古文書「正倉院文書」に檀紙の名前が出てくる。檀紙は、平安時代には手紙をはじめ、詩歌や和歌などを書く懐紙などに用いられる高級な紙であった。楮(こうぞ)の繊維を原料として漉かれた。《檀(まゆみ)の樹皮で作られた上質の紙ということで「檀紙」の名が使われたとの説もあるようだ》。
平安時代には陸奥で多く産出されたが、中世には生産地が広がり各地で漉かれるようになっていった。
福島県安達町上川崎地区は、千年以上の歴史を誇る手漉き和紙(上川崎和紙) (図5)の産地である。その起源は、平安中期に冷泉天皇の時代に始められたと伝えられ、紫式部(図6)や清少納言たち女性は、「みちのく紙」と称していたという。
古くは檀紙には皴がなかったが、元禄時代ころから、皴をいれたものが現れ、檀紙には皴が入るというのが普通となった。紙の大きさによって「大高」、「中高」「小高」の別がある。 (つづく)
(図4) 第2次世界遺産シリーズ 第6集(古都京都の文化財)東大寺大仏殿(2002年)
(図5) 福島県上川崎局・「上川崎和紙」(初日印1989.2.1)
《安達太良山を背景に和紙漉きを描く》
(図6) 第2次国宝シリーズ 第4集、紫式部日記絵巻(1977年)